7・13関西生コン事件 判決 
武建一委員長への実刑を阻止、T生コン事件は無罪
懲役3年・執行猶予5年・未決換算190日の不当判決弾劾し、控訴審へ

「全国から400名以上が駆けつける」

7月13日10時大阪地裁において、関生労組事件・武建一委員長への判決がありました。この裁判には遠くは北海道からなど、全国の支援者400名以上が詰めかけ、権力と結託した使用者団体・大阪広域生コン協同組合の300名弱の動員を大きく凌駕し、圧倒しました。
判決は、滋賀県のF社の工事現場に対するコンプライアンス活動事件、2017年12月のセメントステーションなどにおけるストライキ事件、さらに、T生コンからの1000万円の会館建設カンパ「恐喝」事件について行われ、T生コン事件は無罪、その他について、懲役3年・執行猶予5年・未決換190日というものでした。

この判決は、違法行為をしたものが罪に問われずに違法行為を摘発したコンプライアンス活動を「恐喝未遂」とし、産業別労組のストライキにおける平和的説得活動を「威力業務妨害」とし、それらについて、労組の委員長として「予想外のこととは認められず、想定の範囲内」であるから共謀共同正犯が成り立つとするデタラメなものでした。
しかし、2018年から組合員等延べ89名を逮捕した異様なこの事件で、予想された委員長の実刑判決を阻止し、ひとつの事件の無罪判決を勝ち取ったことは大きな意味があり、この間の全国での支援の広がりの力を示すものであったと思います。

「検察が事件をデッチ上げたもの」

T生コン事件は、会館建設のカンパとして組合に提供された1000万円を、一連の弾圧のなかで、後から「恐喝」として検察がデッチ上げたものでした。しかし、裁判を通しても、そもそも、労組や委員長が1000万円をT生コンに要求したという事実も証拠も何ひとつなく、今回の無罪判決に至ったのです。

2017年12月のストライキに対しては、裁判長は、昨年10.8組合役員と本年3.15現場メンバーへの不当判決を踏襲し、「現場の行動は平和的説得の範囲を超えている」「対象となった企業に組合員はおらず、労組法の使用者に当たらないから正当行為としての刑事免責の対象外」等と不当判決を繰り返しました。裁判後に武委員長が指摘したように、このような判決を放置しては、憲法28条の労働三権は空洞化してしまいます。

「違法行為を指摘したら罪に問われるのか」

滋賀県でのゼネコンF社の現場での違法行為を摘発するコンプライアンス活動については、裁判長は、「個々の態様は穏当なものであったとしても、また、個々の組合員が先行する大阪高裁のH社決定によって違法性がないと信じていたとしても、コンプライアンス活動が4ヵ月にも渡って執拗に繰り返されてF社の負担になった」「湖東協組のK建材が、アウト業者から生コンを買うと大変なことになると言って、湖東協組からの生コンの購入を求めたこと合わせてと総合的な判断すると、一連の行為は脅迫に当たる」としました。違法行為の摘発を「執拗に繰り返す」、マル適マークを取得した生コンの購入を促すと脅迫になるとでもいうのでしょうか。
先日の熱海の土砂崩れは、長年、産廃の不法投棄を疑わせる違法な盛り土の放置が原因でした。コンプライアンス活動はやってみれば解りますが、「執拗に」行わなければ、簡単には不法行為は是正されないのです。

連帯ユニオンは不当判決を許さず、闘い続けます。これからも全国での支援の拡大をよろしくお願いします。

通信/愛知連帯ユニオン

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挑戦を受ける労働基本権保障――一審判決(大阪・京都)にみる産業別労働運動の無知・無理解 (検証・関西生コン事件1)(日本語) 単行本 – 2021/4/20

業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税

「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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