映画「SHE SAID」を通して今一度セクハラを考える

「SHE SAID」この映画を知るきっかけを作ってくれたのは武谷書記次長でした。新聞の切り抜きに掲載されていた論評を読み、興味を持ち、すぐに観に行きました。
映画プロデューサーのハーヴェイ・ワインスタイン氏による性暴力報道を世に出した、二人の女性記者の実話です。この報道が数年前に世界的な拡がりを見せた#MeToo運動の大きなきっかけとなったのです。

「勇気をだし『一歩前進』へ」

私は恥ずかしながら#MeToo運動に関してはテレビのニュースで見覚えがあった程度で、内容を深堀することもなく、「街頭で大勢の女性がセクハラについて訴えている運動」と思い込んでいました。だからこそ、この映画を観て内容を知り衝撃を受けました。
女性たちが受けていた被害は「セクハラ」と呼ぶようなものではなく、明らかに性的暴行という性犯罪だったからです(性的暴行は女優や会社のスタッフに対して30年近くにわたりおこなわれていました。その被害者の総数は82名にのぼるといわれています)。
加害者であるワインスタインのセクハラは、以前から業界では噂になっていましたが、表沙汰になったことはありませんでした。加害者のまわりには擁護する人や支援する人がたくさんいて、被害者が沈黙を通し続けるしかなかったからです。
勇気を出して訴えると仕事を失ったり干されたり、裁判に持ち込んでも決して刑事事件にはならず、結局は示談で片づけられてしまうという理不尽さを経験した被害者たちは、もう二度と関わりたくないし話したくない、と思うのは無理のないことです。
女性記者たちの気の長い説得と「起きた過去は消し去ることも、変えることもできないけれど、わたしたちが力を合わせれば、あなたの体験からほかの誰かを守ることができるかもしれない」という言葉により、心を動かされた一人の有名女優が声を上げたのをきっかけに、次々と声をあげる人が出てきました。結果、ワインスタインはレイプと性犯罪の罪で禁錮23年の有罪判決となり、現在もまだ他の容疑でも裁判中です。

「日本の残念な現状」

日本ではどうなのでしょうか?「セクハラ問題」は無くなりそうもありません。
フリージャーナリストの伊藤詩織さんや、元陸上自衛隊の五ノ井里奈さんのように、実名でセクハラ加害者を告発できる人は少ないと思います。
「セクハラ」という言葉ができたのは、平成元年頃といわれていますが、それまでは女性はただひたすら我慢するしかなかったように思います。
「セクシャル・ハラスメント(略してセクハラ)」という言葉ができて、女性は本当に救われたのでしょうか?もちろん、声に出して「それはセクハラです!」と訴えることができるようになったことに対しては救われている場面も多くなったと思いますが、私は「セクハラ」という言葉の陰に、「セクハラ」と表現するには軽すぎる性暴力や限りなく「犯罪に近いセクハラ」も含まれているような気がします。
例えが悪いかもしれませんが、「いじめ」や「万引き」という言葉も同じように思います。言い換えれば、どちらも犯罪。
「いじめ」は程度によれば傷害罪、暴行罪、強要罪、恐喝罪、侮辱罪。「万引き」は窃盗罪。「セクハラ」も性犯罪とし扱うべき事案が多いと思っています(この議論は、また時間を作って記事にしたいと思います)。

「加害意識の薄さに制裁を」

話は逸れましたが、先ほど名前を出した元自衛隊員によるセクハラ被害を実名で訴えた五ノ井里奈さんは、加害者である元隊員側からの求めで示談を進めてきましたが、主張の食い違いや、その後の回答が途絶えたことで、示談協議が進まなかったので、国と加害者の元隊員5人を相手取り損害賠償を求める訴訟を横浜地裁に起こしました。
五ノ井さんは会見で「一人一人が大切にされて、正しい正義感を持った隊員や組織になってほしい」と話したそうです(1月30日朝日新聞記事より引用)。

「共に考え、できることから実行しよう」

アメリカの#MeToo運動と比べると、日本では「セクハラ」の訴えの効力が弱く、刑事事件になることがほとんどないことを鑑みると、まだまだ女性にとっては厳しい世の中が続くことが予想されます。
私たちは労働組合員として、それ以前に一人の人間として、弱者の声を聴き、声をあげる勇気が持てない人たちのためにも一緒に声を上げていかなくてはいけないと思います。それには何をしなければいいのか、今後も考えていき実行していきたいと思います。
ぜひ、女性だけではなく、男性の皆さんにも機会があれば、映画「SHE SAID」を観ていただき「セクハラ」問題を共に考え議論していきたいと思います。

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。

お問い合わせはコチラ ココをクリック

関西生コン事件ニュース No.83  ココをクリック   
関西生コン事件ニュース No.82  ココをクリック
2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
ココをクリック
関連記事 ココをクリック

賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ

(「BOOK」データベースより)

amazonで購入できます。 ココをクリック