関生支部の産業別労働運動⑦
「関生支部の結成」
1965年10月17日、全国自動車運輸労働組合(全自運)関生支部が結成されました。個人加盟の産業別労働組合(単一の業種別労働組合)として発足しました。発足当初は5分会、組合員数183名でした。
結成後30年間の活動の成果は、❶高水準の賃金・労働条件の獲得。❷大手セメント企業との闘い(使用者概念の拡大)。❸産業別協定の確立(工業組合との交渉権確立、1980年)。❹構造改善事業に伴う廃棄工場の労働者の雇用責任を工業組合がとることでした。
「集団交渉」
関生支部の交渉の特徴は集団交渉です。1973年3月、14社と初の集団交渉が実現しました。集団交渉が実現するまでの経緯は以下の通りです。
それまでの春闘では、生コン業者は、他労組と関生支部との間で格差をつける回答をしてきました。73年春闘では、関生支部は、産業別統一要求、統一交渉、統一指導、統一行動を貫き、全自運中央と全自運地方本部の統一行動、関生支部の独自行動、そして職場闘争を結合しました。また、闘いの相手を直接の雇用主へのみ振り向けるのではなく、セメントメーカーへの闘いを組織し、11波にわたって、延べ1146名を動員する行動を行いました。「労使関係や労働条件の問題は個々の企業では解決できない。集団的に解決しよう」という考えから、集団交渉を追及するに至ったのです。
集団交渉への参加を渋り、態度を明確にしない悪質な企業に対しては集中行動を展開し、戦術もステッカー貼りから早出残業拒否、そして指名スト、時限スト、波状スト、統一ストと徐々に拡大しました。
73年春闘での関生支部側の要求のうち目玉は、「大型運転手最低保障制度」について協定を締結したことです。集団交渉に参加しない生コン企業とも個別協定を結びました。その結果、1973年4月末には、18社と大型運転手最低保障10万円の共通の最低条件を労働協約するすることができました。これは、直接の雇用関係にとらわれず関連する産業への交渉をも含む集団交渉によって共通の基準を獲得したものでした。産業民主制論のいう「集合取引」による「集合協約」(共通規制)の具体的事例となるものです。
73年春闘では、上記のほか、所定労働日の日数計算上において組合活動日を含むことを確認したこと、「賃金抑制」のための重しとなってきた「出来高払制」と「個人償却制」などを廃止したことが大きな成果でした。
個人償却制は、運転手個人に形式的に車両を所有させ、車両の代価を毎月の運賃収入から差し引き償却させるという制度です。運賃収入によっては運転手の取り分が極端に減少し、場合によっては赤字となってしまう仕組みとなっていました。
セメントメーカー宇部興産株式会社の子会社である神戸宇部産業株式会社(生コン製造)は輸送部門の運転手について「個人償却制」を導入し、運転手を形の上では車両所有者であるものと車両所有者でないものに分断し、労働組合の組織化を阻み、運転手を長時間労働に駆り立てるものでした。
これに対し、関生支部は、労働基準局、陸運事務所への要請行動、親会社たる宇部興産に対する抗議行動、市民への宣伝活動を行うなどして、「個人償却制」を廃止させるに至ったのです。これも産業民主制論のいう「集合取引」の実践であり、産業別労働組合であるが故に行うことができた行動でした。
73年春闘で、上記のような成果を獲得できたのは、「個人取引」ではなく、生コン産業および関連する産業に属する企業との「集合取引」に徹したこと(これは労働組合全般に共通すること)、関生支部が産業別労働組合として個々の生コン企業の労働組合組織である分会に権限をもたせず、関生支部の執行部が統一司令部となって行動を展開したこと(個々の企業の労働組合の組織に権限を持たせないことが産業別労働組合の本来的なあり方である)にあります。
関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック
映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性
A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。
[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)
割引価格あり。
お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで