関生支部の産業別労働運動⑧

「産業別運動に危機を募らせる」

関生支部が産業別労働組合として個々の生コン企業の労働組合組織である分会に権限をもたせず、関生支部の執行部が統一司令部となって行動を展開したこと(個々の企業の労働組合の組織に権限を持たせないことが産業別労働組合の本来的なあり方である)が、世間にも、司法にも理解されないところとなっています。しかし、企業側、特に大企業や警察権力は、この点をよく理解しているのです。産業別に「集合取引」を要求され、これに応じて、産業別に労働者に適用される労働条件を統一する「集合協約」(共通規制)を労働協約として締結させられることは、生コン企業の労働者に対する取引上の優位性だけでなく、大企業の生コン企業に対する取引上の優位性を崩される可能性があるからです。
さらに、生コン業者の協同組合が大企業に対し団体交渉権に基づく団体交渉を要求し、団体協約を締結するようなことがあり、この生コン業者の協同組合の行動を労働組合が支援するようなことがあれば、大企業の脅威は一層高まります。このため、大企業は生コン業者の協同組合の共同販売方式については難色を示し、また、生コン業者と労働組合の連携を阻止する策動する行動を行うことになるのです。

「三菱セメントと和解協定を締結」

73年春闘さなかの1973年3月15日、関生支部大豊運輸分会は三菱セメントを当事者とする和解協定を勝ち取りました。
大豊運輸は、三菱セメントの下請け会社である豊国生コンの子会社であり、生コン輸送を事業としていましたが、大豊分会を潰すために企業閉鎖・全員解雇の攻撃を行ってきました。3年半の闘いの末、関生支部は、三菱セメントを当事者とする和解協定の締結を勝ち取りました。これも、産業民主制論のいう「集合取引」によって、労働者の地位向上を実現した実例です。関生支部は、その成果を「使用者概念の拡大」と位置づけ、その後の活動の基本とすることになったのです。

「日雇い運転者の本採用を産別行動で勝ち取る」

生コン輸送業においては、日雇い運転者の問題がありました。日雇い運転者自身は、企業側にとっては景気の安全弁であり、スト破りの役割を担わせる存在でした。個人償却制=出来高払の導入とともに日雇い運転者の存在は、労働力の安売り競争による労働条件の切り下げの効果をもつものでした。
1973年10月13日、大阪セメント(現住友大阪セメント)の子会社大阪生コンの下請輸送部門大進運輸有限会社(新大東生コン)に勤務する日雇い運転手3名が関生支部に加入したことを大進運輸に対して通告し、本採用を要求しました。大進運輸は、この3名が従来所属していた労働組合とのユニオン・ショップ協定に基づき3名の運転手を解雇しました。
関生支部は、関連会社への波状的抗議行動を行い、1973年11月5日、200人の部隊で大東工場に向かったところ、大日本菊水会の暴力に遭い、これに対して大阪セメント本社への抗議行動を行いました。そうして、11月19日の大進運輸との団交で、3名の解雇撤回、本採用とするなどの全面解決にこぎつけたのです。
この経過は、集合取引によって、労働力の安売り競争に加担させられていた労働者の労働条件を引き上げるものであって、産業別労働組合であるが故の行動であり、成果であったのです。

「協同組合との関係」

セメント産業は、戦後の「傾斜生産方式」政策により再建され、以後高度成長を遂げました。セメントの生コンへの転換率が、1960年では8.6%であったのに対し、1975年には60%になっていました。セメントメーカーにとっては、生コン市場の支配こそ、販路拡張の成否を左右することとなったのです。このためん、当初は、セメントメーカーが生コン市場の安定的確保を狙って協同組合を組織化しました。
1968年に最初の協同組合である関東東協同組合が設立されました。1972年春には全国で100を超えるに至っています。セメントメーカーは、協同組合が独占禁止法の適用除外であることを奇貨として、乱売防止価格体系を確立し、輸送部門を合理化し、また、労働組合対策の機関として協同組合を運営したのです。

関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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関西生コン 作られた「反社」労組の虚像【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで組合員の苦悩、決意を竹信三恵子さんが詳しく紹介されています。
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ー 公判予定 ー

12月14日   京都3事件    京都地裁  

10:00~

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2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 ココをクリック
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待望の新刊
検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性

A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。

[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)

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お問い合わせは sien.kansai@gmail.comまで