欧米の消費者運動の歴史と成果を学ぼう
消費者運動に詳しい東京都市大学名誉教授の中原秀樹さんは「欧米では民主主義的な『あるべき市民社会像』を前提に、エシカル消費が発展してきた」と指摘しています。
「消費者」とはいつ生まれ、どのような変遷を遂げたのでしょうか。
「薬と加工肉の成分表示が求められた」
18世紀後半にイギリスで起きた産業革命をきっかけに生まれた近代の概念が「消費者」だといいいます。産業革命で大量生産が可能になり、それまでの「売り手」と「買い手」から、市場を介した「生産者」と「消費者」になっていきました。
19世紀末に「消費者」の意識が顕在化しました。その始まりは、薬と加工肉だったそうで「薬に何が入っているのか、何の肉を食べているのか分からない」と、成分などの表示を求める動きが起きました。
「商品テストと呼ばれる調査機関」
1899年にはアメリカ初となる消費者団体「全米消費者連盟(NCL)が生まれました。中原名誉教授は「このころから消費を通して、より良い生活を送りたいという機運が高まった」と説明します。
アメリカ連邦政府は、医薬品や食品に有害な化学品、防腐剤などを使用することを禁止する法律を1906年に制定しました。商品の成分を調べる機関として、1929年にアメリカでNPO「コンシューマーズ・リサーチ(CR)」が創設され、後に「商品テスト」と呼ばれる調査を始めたのです。
その後、自動車やテレビ、ラジオなども対象となり、消費者運動は国際的に広がりました。第2次世界大戦後、イギリスやオランダ、フランス、ドイツ、オーストラリアなどで、商品テスト誌が続々と生まれました。
「社会的責任投資『エシカル投資』」
ベトナム反戦運動で局面が変わりました。1969年にアメリカで設立されたNPO「経済優先度評議会(CEP)」は、ベトナム戦争に加担する企業からの投資引き上げを呼びかけました。社会的責任投資の始まりでエシカル投資と呼ばれ、これが「投資撤退(ダイベストメント)の考え方につながっていったといいます。
「買い物ガイド『よりよい世界のための買い物』」
「経済優先度評議会(CEP)」は1988年に、買い物ガイド「よりよい世界のための買い物」の出版を始めました。買い物を通した社会の変革を目的とし、環境や女性・マイノリティー登用などの項目から企業を評価し、それを公開しました。このことがやがて、フェアトレード運動にもつながっていきました。
1980年代、南アフリカ共和国のアパルトヘイト(人種隔離)政策への反発が世界的に高まると、南アフリカで事業を展開している企業へのボイコットも盛んになりました。そうした企業に投資していたイギリスの銀行も対象となり、預金の引き揚げが相次いだ結果、収益が15~20%減ったそうです。
「『エシカル消費』と『バイコット』」
1989年にイギリスでボイコットの情報誌として「エシカル・コンシューマー」が発行され、「経済優先度評議会(CEP)」のエシカル投資に倣って「エシカル消費」という言葉が生まれました。
1990年代には、倫理的企業の製品を積極的に買う「バイコット」がボイコットの反意語として生まれ、バイコットが広まったのです。
「国連環境開発会議『SDGs』を採択」
公害問題を引き金に1970年代から環境問題への関心が国際的に高まり、グリーン調達(購入)という言葉が生まれました。
1992年にブラジルで開かれた国連環境開発会議では、持続可能な消費と生産が議論され、2015年には、国連で持続可能な開発目標(SDGs)が採択されました。こうして、「グリーン・コンサンプション(緑の消費)」という概念が、消費者運動の大きな要素になり、市場のなかでの消費者運動から、地球規模で物を考える「グリーン・コンシューマー」の活動に変化したのです。
「2015年、イギリスで『現代奴隷法』が成立」
気候変動がもたらす様々な地球規模の環境破壊は、経済格差と貧困問題を引き起こすと同時に人権問題も大きなテーマとなりました。
1990年代、サッカーボールがパキスタンなどの児童労働でつくられていたことが発覚しました。
2013年には、バングラディシュで先進国向けの衣料品をつくる工場が入ったビルが崩壊し、1000人以上の死者を出したことでは、劣悪な環境で働かされていたことが判明し、問題となりました。
グローバル化が進むなか、安く売られていた商品が、児童労働や劣悪な労働環境で製造されていたことに消費者が気づくことになりました。
2015年には、イギリスで「現代奴隷法」が成立しました。一定規模の企業に対し、奴隷労働や人身売買が生まれないための対策を公表するよう義務づける法整備は、主要国で進んでいます。
「人権を守ることが企業の社会的責任になっていった」
中原秀樹教授は「よい商品をつくり、成分を表示し、安全性を担保する。消費者には選ぶ権利があるので、商品供給は平等でなければならない。それだけでなく、ジェンダーを含め、人権を守ることが企業の社会的責任になっていった」と話します。
また、「エシカルの概念は、新しいものではない」、「経済学の祖」といわれるアダム・スミスについて、「彼は『国富論』で市場経済は『見えざる手』で富が平等に分配されると主張した一方、『道徳感情論』では、平等に分配されるにはルールが必要で、ルールの基本は道徳感情、まさにエシカルな活動が必要だと言っている」と解説。そして「いま、デジタル技術の活用が叫ばれているが、どういう社会を目指すのか、という問いがないのは問題だ」と指摘し、欧米の消費者教育が移民にも向けられていることから、「移民が自分たちで稼いだお金をだまし取られることなく、豊かになれば犯罪に手を染めることもない。社会の一員として責任を果たしてもらうのが目的だ」と提起しています。
「欧米の消費者運動に学ぶことが必要では」
私たち労働者は、欧米の消費者運動に学び「安全」「反戦」「環境」「人権」を意識して、買わないという選択や、買うことで価値観を共有するという選択が求められているのではないでしょうか。
加茂生コン事件差し戻し審完全無罪判決を獲得するべく、12月17日から新たに加茂生コン事件署名活動がスタートしました。
京都事件については団体署名でしたが、加茂生コン事件については各地の要望をふまえて個人と団体の2種類の署名活動に取り組むことになりました。
「関西生コンを支援する会」は、署名活動用に加茂生コン事件とはなにかを描いたニュース号外(漫画新聞)を発行しています。
提 出 先:大阪高等裁判所第3刑事部
署名の種類:団体署名と個人署名の2種類
署名用紙は、団体署名 ココをクリック 個人署名 ココをクリック
集約と提出:第1次集約 1月末日
第2次集役 2月末日
最終週役 3月末日
送 り 先:〒101ー0062
東京都千代田区神田駿河台3ー2ー11 連合会館
フォーラム平和・人権・環境気付
関西生コンを支援する会 ホームページ ココをクリック
TEL:03ー5289ー8222
【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで、「関西生コン事件」の解説。刑事裁判で無罪になった二人の組合員と、組合員を雇った、組合員に仕事を出したことを背景にセメントの販売を拒絶され兵糧攻めにあっているセメント製造業者をインタビュー。また、「産業別労働組合」の歴史の経過を詳しく解説。
動画閲覧できます ココをクリック
ドキュメンタリー番組の前に放送されたMBSラジオ「関西生コン事件とは何か」がネットで聞けるようになりました。
以下のところから聞くことができます。
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映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合潰しに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(左写真は松尾聖子さん)いまも各地で上映会がひらかれている。
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