「弾圧反対を通して関生運動に学び、日本の労働運動の再生を」

木下武男・関生支援東京の会共同代表/元昭和女子大学教授

「労働者に与えられた武器『ストライキ』」

関生弾圧を産業民主主義の観点からとらえることは大変重要です。
労働者は団結権ののもとで労働組合をつくる。その労働組合と経営者とが、お互いに対等な関係として認めて団体交渉を行い、交渉が決裂すれば、労働者はストライキで闘います。産業民主主義の考え方は、団結権・団体交渉権・団体行動権を認め、そのもとで国家が介入することなく労使双方が民主主義のルールの下で労働条件を決めなさいというものです。
この話し合いのルールのもとでも交渉は決裂します。その時にお互いに与えられた武器で闘うのです。労働者に与えられた武器がストライキです。ストライキは経営や生産活動に打撃を与えることを目的にしています。一方、経営者も武器を持っています。それがロックアウトです。経営活動をストップして、働けないようにして労働者の生活に打撃を与えるのです。
ストライキは、労働者が労働力商品の供給を一時的にストップすることです。労働力商品を売りませんよという武器です。経営側には労働力商品を買いませんよとするロックアウトがあります。労働力商品の売買をめぐって対等に闘う。これが産業民主主義のルールです。

「産業民主主義をめぐる闘い」

ところが、今回の弾圧はこの武器を取りあげてしまうに等しいことなのです。ストライキは、それで営業が妨害されてしまっても、民事請求されないことは産業民主主義の範囲内のルールなのです。しかし、処罰してしまう。これが関生支部弾圧の根本問題です。喧嘩のルールを変える卑劣な行為です。これは憲法28条を死文化してしまうことであり、その意味では政治の問題でもあります。
イギリスの例です。1900年に南ウェールズのタッフ・ヴェール鉄道会社の争議で、裁判所は、ストライキの時のピケットに対して民事請求するのは当然だという判決を下したのです。労働運動の活動家は判決をくつがえすには、新しい法律をつくることであり、そのためには労働者階級の独立した政党が必要だと自覚しました。1906年の選挙で躍進し、労働党がつくられました。そして労働争議法が制定され、これでタッフ・ヴェール判決を無きものにしたのです。イギリスの労働運動は弾圧をはね除け、その過程で労働者政党をつくりだしたのです。
いまの日本に関生弾圧を許さないとする政党がどれだけあるでしょうか。関生弾圧は産業民主主義を保障している憲法の問題だと捉え、運動を政治に変えていくきっかけにするぐらいに広げていきたい。

「新しい労働運動と関生支部」

次に関生運動の原点を振り返り弾圧を真にはね返す道を考えたいと思います。
タッフ・ヴェール判決の以前、1889年にロンドンドックの大ストライキがありました。当時のイギリスの労働組合は裕福な熟練労働者だけで組織されている職業別労働組合でした。一方、港湾などで働く不熟練労働者は、プロレタリアートの屑、浮浪人と呼ばれ、失業と貧困の中で生活していました。
その労働者が立ち上がったのがこの大ストライキだったのです。1万6000人を動員して、ロンドン港からテムズ河に至る港湾地帯一帯にピケットラインを張り続け、荷揚げをストップさせ勝利しました。この争議をきっかけにしてできたのが一般労働組合(ジェネラル・ユニオン)でした。
第二次大戦後、労働運動の戦闘的な一翼を担っていたのがイギリス運輸一般労働組合(TGWU)でした。一般組合は内部にさまざまな業種別部会(トレード・グループ)があり、それぞれが団体交渉の単位です。いわば小さな産業別組合、それが「部分」です。それを統合したのが全国組織で「全体」にあたります。

「一般労働運動の発展がカギを握る」

そして日本でも、イギリス運輸一般を参考にしながら一般組合をつくろうという試みが、1970年代に起きます。1973年に建設一般が、1977年に全自運から運輸一般(1万1000人)が、同じく化学一般がつくられました。一般組合運動は、未組織労働者を組織し、企業別組合を克服するという点で、1950年代後半の合同労組運動につぐ第二の波でした。
この運輸一般の生コン部会の中心メンバーが若き武建一だったのです。しかし1983年、運輸一般本部の関生支部への分裂攻撃によって支部は切り離され、孤立を余儀なくされました。一般組合運動も衰退していきます。関生支部は「全体」から切断された「部分」として、孤塁を守りながら産業別組合の真実を貫きとおしてきたのです。
今回の弾圧の狙いは、産業別組合の支部を今度は消し去ることです。だから弾圧を根本からはね返す道は、支部を守ると同時に、真実の組合を広げることです。

「部分をつくり、全体を求めていく」

東京の「支援する会」は、弾圧反対を通して、関生支部の運動を学び、日本の労働運動の再生を考えることを目的にしています。日本の労働運動の再生は、弾圧をはね返す運動を通じて、関生のような「部分」を無数に創造し、そして「全体」を獲得することだと思います。
かつて武委員長たちがやった運動を、いまこの日本で、今度はみんなでやり直していく。「部分」をつくり、「全体」を求めていく。これが、私が共同代表を引き受けた理由でもあります。

(3月15日「関生支援東京の会結成集会」での講演録)
木下 武男(きのした たけお)氏
日本の社会学者。昭和女子大学名誉教授。専門は現代社会論、労働社会学。1944年、福岡県に生まれる。東京理科大学工学部、法政大学社会学部を卒業し、1975年に法政大学大学院社会学専攻修士課程を修了する。法政大学などで非常勤講師をつとめ、1999年に鹿児島経済大学(現・鹿児島国際大学)教授に就任し、2003年に昭和女子大学教授に就任する。『若者の逆襲 ワーキングプアからユニオンへ』(旬報社、2012)ほか、著書多数。

ウェキペディアより

※「関西生コン労働組合の弾圧を許さない東京の会」発行の「共に闘う」から、許可を得て掲載しています。

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連帯ユニオン、葛西 映子、北 建一、小谷野 毅、宮里 邦雄、熊沢 誠、海渡 雄一、鎌田 慧、竹信 三恵子(著)

内容紹介
戦後最大の「労組壊滅作戦」が進行。
警察・検察・裁判所による弾圧。
権力と一体となった業界あげての不当労働行為。
関西生コン事件の本質を明らかにする!
ストライキやコンプライアンス活動を「威力業務妨害」「恐喝未遂」として89人逮捕、71人を起訴。
委員長と副委員長の拘留期間は1年5か月超。
取り調べで「組合をやめろ」と迫る警察。
家族に「組合をやめるよう説得しろ」と電話をかける検察。
組合活動の禁止を「保釈許可条件」とする裁判所。
いったい誰が、なんのために仕掛けているのか「?関西生コン事件」の真相。お問い合わせは、連帯ユニオンまで TEL:06(6583)5546 FAX:06(6582)6547
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