日本を再び軍国主義にしないための学習を

1952年8月に開催された、広島平和記念公園の慰霊碑の除幕式の写真には、原爆ドームと慰霊碑の間に、「バラック」と呼ばれた簡易住宅がひしめきあう光景が写っています。戦前、その場所にあった繁華街は、戦後の一定期間だけ存在しましたが、そこで暮らしていた人々の生活などは、ほとんど知られていません。

「復興のあり方が問われている陳情書」

戦後、広島では「平和都市の建設」をかけ声に大規模な都市計画が進行しました。
区画整理で立ち退きを迫られた簡易住宅などに住む人々は、計画の変更や立ち退きの猶予を求めて訴えを繰り返し、あらゆる方策を講じて行政に交渉を挑んだのです。
住民たちの切実な声には、生活の再建が復興によって脅かされ、仮住まいのまま何度も移動を強いられたことが、公文書として残っている陳情書から読み取れます。
陳情書には同じ立ち退きの境遇ゆえに隣人を妬み、街の美観や公益の理念を振りかざして、「不法建築」の撤去を煽る匿名の投書が数多く見られ、差別感情にまで発展する住民同士の複雑な利害対立や、市民の選別を始める行政側の変化、達成を自己目的化した復興のあり方など、圧倒的な物量で進む計画と、陳情書に述べている住民の声との衝突がつくり出す戦後の都市建設の力関係がわかります。

「加害、被害の両方の観点から歴史を学ぶ」

原爆投下から75年を迎えた広島。戦前・戦中は「軍都広島」と呼ばれ、日本軍の軍需工場で栄えた歴史があります。被爆者のある女性は「加害を語ってこそ、被害を語ることが大切であり重要」とメディアなどで語ります。
この女性の言葉には、多くの学ぶべきことがあるのではないでしょうか。私たち労働組合は、権力者や一部の特権階級が、同じ誤りを繰り返させないために、加害、被害の両方の観点から歴史を学ぶことが重要です。日本を再び軍国主義にしないために。

※「広島復興の戦後史:廃墟からの『声』と都市」(人文書院)、著者・西井麻里奈さんの書籍を参照しました。

 

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