12.17関生支部から学ぶ学習講演集会(No.4)
「関生支部のような労働組合を創っていくことが大切だ!」

木下武男(労働社会学者・元昭和女子大学教授)

2020年12月17日、東京都内で関西生コン弾圧を許さない東京の会主催で「関生支部から学ぶ」学習講演会が開催されました。木下武男さんが講演し、活発な意見交流の場となりました。

前回からのつづき…

「4.『関生支部を作り直す』」

「座談会」の中で「関生支部を作り直す」と武委員長は話されました。「量を獲得することと同時に、質を充実させていかなければいけない」、「質」つまり幹部論です。武さん独自のものだと思います。武さんの若い頃に教え込まれて自分でまた編み出されたのだと感じました。
この中で一番凄いなと思ったことは、「犠牲」ということを「自己犠牲」と思わず、「社会的な役割だという自覚が必要」というところです。「犠牲」ではなくて、「弾圧されて独房に入ることも役割なんだ」と言っているところが、凄いなと思いました。

「Ⅲ 労働組合による産業の統制」
とてもむずかしいことを考えておられるようなのです。

「1.生コン業界の構造と弾圧の背景」

第一次弾圧の後、やがて運動は飛躍をとげ、経営側に「価格に関してまで本格的に手を突っ込んできた」と思わせたのです。これで経営が「我慢ならない」となった。これが弾圧の直接的な背景となったと思います。
ここで興味深いことを武委員長は話しています。大手セメント企業には、三大セメントメーカーがあって、宇部三菱セメント、住友大阪セメント、太平洋セメントです。宇部セメントが今度の関生支部弾圧の主人公になっているけど、それと他の系列とは軋轢があると業界分析しています。セメント独占の三系列における宇部の突出です。
ところで宇部興産は、実は岸信介と結びついていて、山口県に本社があり安倍晋三とも結びついていることを武委員長は推理小説の如く述べています。非常に面白くて、この弾圧が安倍と麻生の「官邸マター」であることが推測できます。そして下手人さえも、ちまたで話題になっている公安警察あがりのあの人物だとも思い浮かびます。
だからこそ、この関生支部への権力弾圧をはね返すのは一筋縄ではいかない。弾圧の背景に国家権力の中枢がいるわけですから、腹をくくって、全国的な運動の展開で反撃していかなければならないということです。そして権力に、「関生支部弾圧によって労働運動再生に火を付けてしまった」、そのことを思い知らせることです。

「2.大阪広域協同組合の自滅」

今後の見通しとして、武委員長は大阪広域協組は「自滅の運命にある」と見ていました。「腐敗していてどうしようもない、だから三系列の中での矛盾もある」と述べていました。

「3.対抗戦略」

つぎは、武委員長が生コン業界の将来を考えていることについてです。
①現在の生コン生産については操業率が非常に低いのです。低いのに儲かっているのはなぜかということです。大坂広域協組の経営者はフェラーリを乗り回しているぐらい、不当に利益を得ている。生産価格の上昇は関生労働者の賃上げの原資になっていることは確かです。しかし、不当に生産量を低くしながら、生コン価格を上げ、その差額で彼らは腐敗している。だったら、将来的には、工場あたりの生産量を上げていく。そして生コン価格をまっとうに上げていく。
②それで将来は生コン工場を大規模化する。生コンの生産量を上げる。そのために工場を大規模化する。
③そして工場の集約化です。生産量は上げるけれども、工場が多すぎる。そこで集約する。現在は敷地面積130坪くらいのものを500坪くらいにする。そしていま180~190ある工場を60にする。
実は武委員長が言いたかったことはここだったのです。これを労働組合がやることは大きな課題です。ここからは私の推測です。私は大きな協同組合にして集約化する方法ではないかと思っています。工場を集約化することは経営者の数が少なくなることです。大きな協同組合にすれば、経営権を放棄させながらも、大きな事業協同組合の中に経営陣として吸収できます。工場を集約化して大規模化していく。武委員長は合理化しながら新鋭設備にしていくとも話していました。品質の良いものを必要な量だけ作っていく。これが委員長のいう「適正生産方式」なのかと思います。
いずれにしても、大きな挑戦だと思うのは、労働組合が「生産の質と量」を統制することです。労働組合が企業の集約化、そして工場の大規模化と設備の高度化を進めながら、生産をコントロールしていく。
これは資本主義の根幹に関わることです。つまり労働組合が「生産の質と量」を統制するということです。だからステークホルダー論というのは、労働組合がそういったことをやるための合意形成の重要な道具立てという意味合いをもってきます。だが、武委員長は何を考えているのか計り知れないところがあるというのが私の本音です。
それと関連して国鉄の集会の時に、私は「再公営化」というヨーロッパの運動を紹介しました。例えば、2020年1月にイギリス北部で分割・民営化された鉄道を再公営化させた運動があります。この「再公営化」は単に国有に戻すのではないのです。「コモン(共)」という思想で、鉄道に関わるすべての人々が所有と管理に参加するということです。単に経営参加ではなくて、産業を統制することだと思います。再公営化という思想と、武委員長が目指している労働組合による産業の統制を、一緒に考えると、なにやらとんでもない方向が出てきそうです。とても面白いというか、夢のある話しです。
ともかく、そのようなことは企業別組合では考えようもない方向性です。そういう遠い遠い先の夢のような構想も考えながら、足下で業種別の運動と組織に取り組むことが求められています。どの業界でもいいのです。どこにも業種別ユニオンはないのですから、手当たり次第です。潰れてもいいのです。また創ればいいのですから。以上で終わります。

終わり

※「月刊労働運動2021年2月号」の記事。発行責任者・編集者から許可を得て掲載しています。

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なぜ、いま戦後最大規模の刑事弾圧が労働組合に加えられているのか!?
641日勾留された武委員長が語る

「関西生コン事件」で逮捕された武建一委員長は今年5月29日、641日ぶりに保釈された。その1ヵ月後に収録されたロングインタビューをまとめた本が昨年12月10日発刊された。
・一連の事件は、なぜ起きたのか?
・関生支部とはどのような労働組合なのか?
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そんな疑問に事実をもって答える1冊。ぜひ、お読みください。『武建一が語る 大資本はなぜ私たちを恐れるのか
発行・旬報社、四六判218ページ、定価1500円+税
*全日建(全日本建設運輸連帯労働組合)にお申し込みいただければ頒価1500円(送料込み)でお届けします。多部数の場合はお問い合わせください。
お問い合わせ03-5820-0868
【目 次】
第1章 刑事弾圧
641日にもおよんだ勾留生活/なぜ私は逮捕されたのか/協同組合の変質/労組破壊に参加したレイシスト
第2章 「タコ部屋」の過酷労働
私の生い立ち/「練り屋」と呼ばれて/労働運動に目覚める/関生支部の誕生/初めての解雇
第3章 闘いの軌跡
万博不況とオイルショック/ヤクザと生コン/経済界が恐れる産業別労働運動
第4章 大同団結
安値乱売で「がけっぷち」/大阪広域協組の誕生/シャブコン/2005年の弾圧事件/ゼネスト決行/目指すべき場所
解題・安田浩一(ジャーナリスト)
皆様には御元気で御活躍のことと存じます。
この間、全国の多くの皆様より私たち関生支部に対する国家権力と大阪広域生コンクリート協同組合、差別排外主義者集団が一体となった攻撃をはね返す闘いに、多大な御支援をいただきまして誠にありがとうございます。
このたび、著書『大資本はなぜ私たちを恐れるのか』を昨年12月10日に発行する運びとなりました。
今日まで、私は、会社の雇ったヤクザに5回以上殺されかけたり、刑事事件をでっち上げられ前科5犯にさせられています。
1980年代には日経連の大槻文平会長(当時)から「関生型運動は資本主義の根幹に触れる」と言われ、国家権力とマスコミからは「生コンのドン」「金を企業からむしり取る」などとして「反社会的勢力」とレッテルを貼られています。
それはなぜか。歴史と今日を振り返り、事実を元に書かせていただいています。
是非、一読下さい。
心より愛をこめて
武 建一

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