和歌山広域協組事件第7回公判、8月26日、和歌山地裁
連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が8月26日、和歌山地裁で開かれました。当日の公判は、検察側の証人尋問でした。
「和歌山広域協組事件とは」
和歌山の生コン企業の経営者らが元暴力団らを使って、宣伝活動などの組合活動を妨害したことや、関生支部事務所を高級車で周回して、組合員らを脅すなどした行為に対して、2017年8月22日、関生支部の組合員らが、和歌山広域協組に赴き、抗議と事実検証のための交渉をしたことが、威力業務妨害、強要未遂とされた事件です。
「今回の原因となった2人の証人尋問」
第7回公判は、検察側の証拠調べで、事件とされている8月22日の抗議行動の原因となった、関生支部事務所の周辺を高級車で周回した元暴力団を含む2人の証人尋問です。
「元暴力団は所在が不明?」
午前中は、小山組の元暴力団H氏の証人尋問でしたが、H氏は出廷しませんでした。検察側は、H氏の「所在が不明」のためと理由を述べましたが、本当なのでしょうか?元暴力団のH氏を証言台に立たせることに検察側が危惧したのではと感じます。
「M理事長との関連はないと強調していた」
午後からの予定だったT氏を繰り上げて証人尋問が始まりました。T氏の主尋問は、8月の初旬に、偶然、M理事長と再会して仕事の相談をした。その翌日、元暴力団の和歌山広域のT氏と初めて会い、関生支部は、ゴロツキ集団だと聞いた。その和歌山広域のT氏から依頼されて関生支部の調査を始めたことなどを、検察のストーリーに沿った証言を行いました。
T氏は、検察官にM理事長との関連について尋ねられると「M理事長には報告していない」「M理事長の指示ではない」「M理事長には話しをしていない」などと強調していたのが印象的でした。
「調査活動という名目で、組合事務所の周辺を高級車で周回し、組合員らを『脅し』ていた」
弁護側は、普門弁護人が、建設会社のY社から、関生支部の組合活動のことで相談があったこと、M理事長と和歌山広域のT氏がつながり準備していたことなど、T氏の供述調書や主尋問の答弁の矛盾を追及し、元暴力団のH氏とT氏の2人が、調査活動という名目で、関生支部事務所の周辺を高級車で周回して、組合員らを「脅し」ていたことを立証する尋問を展開しました。
また、普門弁護人は、自警団活動について尋ねたところT氏は、「H氏がリーダーで、自分はその次(ナンバー2)だ」と答えました。
さらに、2018年1月22日の関生支部事務所前の抗議行動(襲撃事件)に参加したのかとの尋問にT氏は、「参加した。(元暴力団の)H氏とM理事長も参加していた」と答えました。
久掘弁護人は、T氏が元暴力団のH氏に、「具体的な活動内容を説明せずに誘った」との答弁の矛盾を追及し、「H氏は、腹も据わっており、トラブルに臨機応変に対応できるから」とのT氏の供述を確認しました。
また、自警団では給料をもらっていたのかとの尋問にT氏は、「月30万円もらっていた」と答えました。「和歌山有志の会」ではなかったのでしょうか。
中島弁護人は、建設会社Y社と和歌山広域協組が被害者なのかとの尋問にT氏は、それを認める内容を答えていました。
「調査活動は自弁だ」
最後に裁判官から尋問。関生支部事務所周辺の調査を2回おこない、報酬はもらっていないと答えていたが、高速道路代やガソリン代はもらったのかとの尋問にT氏は「もらっていない。最初からもらうつもりはなかった」と答えました。
また、8月21日(事件とされている前日)に、第3港湾事務所で、M理事長、(和歌山広域の)T氏、(元暴力団の)H氏とT氏の4人が会談したとのことだが、M理事長とH氏は初対面かとの尋問にT氏は「初対面だ」と強調していました。
「検察側証人の矛盾を追及する尋問となった」
公判終了後、弁護団は「M理事長と和歌山広域のT氏、建設会社Y社とのつながり、いわゆる「芦原地区建設現場」の背景や、元暴力団のH氏とT氏の2人が、調査活動という名目で、関生支部事務所の周辺を高級車で周回して、組合員らを「脅し」ていたことなどを立証する尋問を展開し、一定の成果が獲得できた。引き続き無罪判決を目指して取り組む」と報告がされました。
被告人とされている当事者からは「無罪を勝ち取るまで闘う」と引き続きの支援が呼びかけられました。
「傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」
午前中、目一杯という長時間にわたる証人尋問に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさんに感謝します。コロナ禍で暑いさなか、遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさん、本当にありがとうございました。
次回の第8回公判は、9月16日(木)、10:00から15:30まで、検察側の証拠調べで、元組合員K氏の証人尋問です。
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業者団体と警察・検察が一体となった組合弾圧=「関西生コン事件」がはじまって4年。
労働法研究者、自治体議員、弁護士の抗議声明が出され、労働委員会があいついで組合勝利の救済命令を下す一方、裁判所は産業別労働組合への無知・無理解から不当判決を出している。
あらためて「関西生コン事件」の本質、不当判決の問題点を明らかにする!
連帯ユニオン(著)、小谷野 毅(著)、熊沢 誠(著)、& 2 その他
発行・旬報社、定価800円+税
「関西生コン事件」がはじまってから4年目となります。
関生支部(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)を標的として、大阪広域生コンクリート協同組合(大阪広域協組)が日々雇用組合員の就労拒否(400人以上)、正社員組合員の解雇、業界あげての団交拒否を開始したのが2018年1月。このあからさまな不当労働行為の尻馬に乗って、滋賀県警が半年後の2017年7~8月にかけて組合員と生コン業者ら10人を恐喝未遂容疑で逮捕しました。その後、大阪、京都、和歌山の三府県警が、2019年11月にかけて、じつに11の刑事事件を仕立てあげ、のべ89人もの組合員と事業者を逮捕。数え上げるとじつに計18回も逮捕劇がくりかえされ、のべ71人が起訴される事態に発展しました。いずれも、ストライキやビラまき、建設現場の法令違反を調査、申告するなどして公正な取引環境を実現するためのコンプライアンス活動、破産・倒産に対して雇用確保を求める工場占拠闘争など、あたりまえの労働組合活動が、恐喝未遂、恐喝、強要未遂、威力業務妨害といった刑事事件とされたものです。
業者団体と警察・検察が表裏一体となった組合弾圧、それが「関西生コン事件」です。
これに対し、歴代の労働法学会代表理事経験者を多数ふくむ78人の労働法学者が2019年12月、憲法28条の労働基本権保障や労働組合法の刑事免責を蹂躙する警察・検察、そしてそれを追認する裁判所を批判して「組合活動に対する信じがたい刑事弾圧を見過ごすことはできない」とする声明を公表しました。全国各地の120人超の自治体議員の抗議声明、弁護士130人の抗議声明なども出されます。また、自治労、日教組などの労働組合や市民団体がつくる平和フォーラムが母体となって「関西生コンを支援する会」が結成されたのをはじめ、各地で支援組織が2019~20年にかけてあいつぎ結成されます。「関西生コン事件」は関生支部だけの問題ではない、労働組合の権利そのものを脅かす事態だという認識が広がっています。
さらに、冒頭に述べた一連の解雇、就労拒否、団交拒否に対抗すべく関生支部が申し立てた20件近い不当労働行為事件において、大阪府労働委員会が2019年秋以降、あいつぎ組合勝利の救済命令を下しています。その数は命令・決定12件のうち10件(2021年4月現在。大半が中央労働委員会に再審査事件として係属)。団結権侵害を主導した大阪広域協組の責任が明確になってきました。
一方、11件の刑事事件はその後、各事件の分離、併合の結果、大阪、京都、和歌山、大津の四地裁において8つの裁判に整理され、審理がすすめられ、現在までに、大阪ストライキ二次事件(2020年10月)、加茂生コン第一事件(同年12月)、大阪ストライキ一次事件(2021年3月)の3つの一審判決が出されています。
これら判決は、労働委員会事件で出された勝利命令とは対照的に、いずれも労働組合運動に対する浅薄な理解と認識をもとに、大阪広域協組の約束違反や企業の不当労働行為を免罪する一方で、産業別労働組合としての関生支部の正当な活動を敵視するものとなっています。
そこで、この機会に、あらためて「関西生コン事件」とはなにか、また、これら不当判決の問題点はなにかを、労働組合運動にたずさわる活動家のみなさまをはじめ、弁護士、研究者、ジャーナリストのみなさまに一緒に考えていただくために、裁判や労働委員会に提出された研究者の鑑定意見書などを収録した『検証・「関西生コン事件」』を随時発刊することにしました。
控訴審において無罪判決を勝ち取るために努力するのはもちろんのことですが、不当判決を反面教師として、先達が築いてきた労働運動の諸権利を学び直し、新たな運動を創造していくことが私たちに求められていると考えます。本書がその手がかりとして活用されることを願ってやみません。
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