3.2大津地裁不当判決-永嶋弁護士

3月2日、大津地方裁判所刑事部(畑山靖裁判長・沖敦子・中野彩華)は、湯川委員長ら6名に判決を言い渡した。コンプラ活動が恐喝未遂・威力業務妨害にあたるとして起訴された事件、湯川委員長についてはそれに加えて、関生支部50周年事業に対するカンパが恐喝として起訴された事件(タイヨー事件)であった。判決はすべての被告人についてすべての事件を有罪とし、湯川委員長に懲役4年の実刑、それ以外の組合員らには執行猶予付きの懲役3年から1年とした。

「1 判決は「正当行為」を議論する法律的な意味が分かっていない」

憲法28条は勤労者の団結権・団体交渉権その他の団体行動権を保障している。憲法と労組法は正当な争議行為や組合活動の刑事免責を保障している。弁護団及び組合は、幾度となく、本件で問題とされているコンプラ活動等は正当な組合活動である、警察・検察による逮捕・勾留・起訴は団結権侵害であると具体的に主張してきた。
ところが、判決には、憲法28条はおろか労組法という言葉が一回も出てこない。判決は、「被告人らはコンプラ活動の目的が労働組合の活動の目的として正当であると主張する」と要約した上で、要旨「被告人らの行為は恐喝の実行行為に該当するから、その行為を正当な行為とみることはできない」というだけである。捜査機関は団結権の侵害を意図していなかったというところで、判決に「団結権」という言葉がでてきたが、裁判長は判決朗読の際、「団体権」と言い間違えていた。憲法も労組法も知らない裁判官の姿がよく表れている。
しかし、そのこと以前に、労働組合活動の正当性が問題になるのは、その活動が形の上で業務妨害罪や恐喝罪その他の犯罪の実行行為に該当するからである。「実行行為に該当する」からこそ、刑事免責が及ぶかどうか、正当行為に当たるかどうか、が問題になる。「実行行為に該当するから、正当な行為とみることはできない」と簡単に弁護団の主張をスルーした判決は、憲法・労組法への無理解以前に犯罪が成立する要件を理解していない。

「2 判決は建設現場の違法行為を助長させる」

判決は、組合員らの指摘が「些細な違反」ばかりだという。また、「警察官、行政職員との対応を余儀なくさせる」ことも威力業務妨害や恐喝の実行行為の一部だともいう。しかし、組合員らの指摘の中には、生命・身体に関わる重大な違反が相当数あった。ところが判決は、これらの事実が恐喝や威力に影響するのか、しないのか説明しない。そのことを考慮することさえなく犯罪の成立を認める判決は、建設現場の違法行為を助長するものでしかない。

「3 判決は有罪ありきの予断に満ちている」

コンプラ活動について、弁護団は、星山事件の際に問題になった活動と本件での活動を具体的に論じて、星山決定に照らせば本件は犯罪にならないと主張した。これに対して、判決は「星山決定はおよそ関生支部組合員らのコンプラ活動一般について、社会通念上相当であると認めたものでない」として弁護団の主張を斥けた。弁護団はそんな主張をしていない。判決は、弁護団の主張を黒く塗っておいて、黒いと批判している。
判決が予断に満ちていることはとりわけ、タイヨー事件において著しい。タイヨー事件では、湯川委員長と共犯とされていた武前委員長に対して大阪地裁・大阪高裁が無罪を宣告している。同一の証拠に基づいて無罪を宣告した大阪地裁・大阪高裁判決と比べれば、大津地裁判決は説得力のかけらもない。たとえば、「被害者」側で畏怖していたと証言したものは誰もいなかったが、判決は被害者は「畏怖」していたと結論をいうだけである。金銭授受の際、湯川委員長はその場から退席させられており、弁護団はそのことも湯川委員長に恐喝が成立し得ない大きな根拠だと主張した。ところが、判決は弁護団のこの主張について一言も触れていない。

「杜撰な判決に、控訴審で無罪を勝ち取る!」

弁護団は、判決当日に控訴した(裁判所は、全員に有罪を、しかも湯川委員長には実刑判決を言い渡しておきながら、判決から2週間の控訴期間内に判決を書き上げておらず、判決が弁護団に交付されたのは控訴期間を過ぎてからであった)。被告人らは本当に刑事裁判を受けたと言えるのか、それほど判決は杜撰であり、控訴審における是正は必至である。証拠と法律に基づけば、無罪以外にあり得ない。そのことを、控訴審において、弁護団は全力で明らかにする。

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち

この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。

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ー 公判予定 ー

4月19日  コンプライアンス二次事件 大津地裁 10:00~
5月11日     京都3事件                    京都地裁 10:00~

関西生コン事件ニュース No.88  ココをクリック3月29日発行 関連動画 「関西生コン事件」報告集会 ココをクリック 
関西生コン事件ニュース No.87  ココをクリック 
関西生コン事件ニュース No.86  ココをクリック   

2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み) 1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。 そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。 業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。 なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。 迫真のルポでその真実を明らかにする。

目次 :
プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ

【著者紹介】 竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

第 10 回「日隅一雄・情報流通促進賞」の特別賞を受賞 詳しくはコチラ

(「BOOK」データベースより)

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