関生支部の産業別労働運動⑥
…前回からのつづき

セメント・生コンの物流

セメント、生コンの物流は、❶セメント工場→サービスステーション(SS)、運搬手段はタンカー、トラック、バラ圧送など。❷SS→生コンプラント、運搬手段はバラセメント車。❸生コンプラント→建築現場、運搬手段はミキサー車。❹建築現場→打設箇所、運搬手段はポンプ車。
生コンの主たる原料であるセメントは、セメント工場からまず全国に配備されている中継基地(サービスステーション:SS)にタンカーやトラックで輸送されます。
SSでは、セメントをサイロに一時的に貯蔵しておきます。需要者に配送する場合は、バラのまま(袋に包装しない状態。粉体のまま)、トラック(バラセメント車)に積み込んで、生コン工場に輸送されます。
近畿エリアにおけるSSは、住友大阪セメント株式会社の場合、大阪府堺市、大阪市港区、大阪市大正区、和歌山市、和歌山県西牟婁郡上富田町、和歌山県新宮市、和歌山県海南市などに設置しています。SSからバラセメントで生コン工場に配送されます。
宇部三菱セメント株式会社の場合は、大阪市港区、大阪府堺市、和歌山県海南市等にSSを設置し、各生コン工場に配送されます。
セメント・生コンの商流は、セメント関係ではセメント代金を生コン業者又は協同組合が販売会社(商社)を介してセメントメーカーに支払います。生コン関係では、生コンの代金を生コン業者又は協同組合が販売会社(商社)を介してゼネコン等から受け取ります。
生コン業者の協同組合から需要者に対する販売方式には以下のようなものがあります。❶直販(直販方式)。❷販売店経由(販売店方式)。❸卸協同組合経由(卸協同組合方式)。❹直販・販売店経由併用。❺直販・卸協同組合経由併用。❻販売店経由・卸協同組合経由。

「生コン産業の特質、生コン産業で働く労働」

生コンはセメント会社の直系または専業企業で製造されます。生コンが製造から納品まで90分という制約があること、ストックがきかない受注業務であることから、生コン製造企業は基本的に中小零細の規模が多いのです。
セメント会社は高い独占価格でセメントを生コン企業に販売したい。他方、ゼネコンは安い価格で生コン企業から生コンを仕入れたい。間にはさまる専業の中小零細生コン企業はコスト(人件費、輸送費)を抑制して生き残りを図りたい。その結果、生コン企業や運送会社で働く労働者の労働条件は常に切り下げられる圧力にさらされるのです。
過去においては、生コン業界での労働は過酷なものでした。残業は月に200時間を超え、年間休日は日曜日も含め2~5日。仮眠室で少しばかりの睡眠・休憩をとって何日も家に帰らずに、朝星・夜星を仰ぎながらの連続勤務をしていました。
弁当も信号待ちや積み込みの間に、ミキサー車の運転席でかきこんでいました。暴力団を導入しての暴力的労務支配がまかり通っていたのです。

「関生支部の活動」

生コン業者に勤務する労働者は、生コン業者に対しては経済的劣位にあり、対等に取引をし、労働力を少しでも高くし、労働条件を少しでも良くするためには団結するほかないのです。
生コン業者は、川上産業であるセメント産業における寡占メーカーに対しては経済的劣位にあり、また、川下産業である建設業の大企業に対しては経済的劣位にあり、対等に取引をし、セメント価格を少しでも安くし、生コン価格を少しでも高くするためには団結するほかないのです。
主として生コン業者に勤務する労働者を組合員とする関生支部は、生コン業者に対しては、団体交渉によって賃金等の労働条件を組合員にとって少しでも有利なものとすることを目指し、また、生コン業者のセメントメーカーやゼネコン等に対する取引条件を少しでもよくする活動に対して支援すべき立場にあり、かつ、それを実践してきました。
このような観点から関生支部の労働組合としての活動をみていくと、戦後まもなくの政府が中小企業と労働組合との連携を忌避したように、関生支部による生コン業者との連携は大企業が強く忌避してきました。
関生支部の活動は、ウェッブ夫妻の産業民主制論が分析した集合取引、集合協約(共通規制)の視点にたってみると、憲法28条が想定した産業別労働組合として原則的な活動を行ってきたといえます。労働組合活動を通して、より実効的な戦術を編み出し、それが大企業をいらだたせ、ときには暴力団関係、ときには権力による刑事弾圧によって、その活動が敵視されてきたのです。

次回につづく…

関生弾圧について家族の目から描いた『ここから~「関西生コン事件」と私たち』が5月10日、2023年日隅一雄・情報流通促進賞奨励賞に選出されました。詳しくはコチラ ココをクリック

映画 ここから 「関西生コン事件」と私たち
この映画は「フツーの仕事がしたい」「アリ地獄天国」など労働問題を取り上げ注目を浴びている土屋トカチ監督の最新作。「関西生コン事件」の渦中にある組合員たちの姿を描いた待望のドキュメンタリー映画『ここから「関西生コン事件」と私たち』がこのほど完成。10月下旬から各地で上映運動がはじまった。10 月 23日には「関西生コン労組つぶしの弾圧を許さな い東海の会」が名古屋で、11月6日には「労働組合つぶしの大弾圧を許さない京滋実行委員会」京都で上映会。業界・警察・検察が一体となった空前の労働組合つぶしに直面した組合員と家族の物語を見つめた。(写真右は京都上映会 で挨拶する松尾聖子さん) 今後、11月13 日には護憲大会(愛媛県松山市)、同月25日は「労働組合つぶしを許さない兵庫の会」が第3回総会で、12月16日は「関西生コンを支援する会」が東京で、それぞれ上映会をひらく。
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関西生コン 作られた「反社」労組の虚像【竹信三恵子のホントの話】
デモクラシータイムスで組合員の苦悩、決意を竹信三恵子さんが詳しく紹介されています。
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2021年12月9日「大阪市・契約管材局と労働組合の協議」
回答が大阪市のホームページに掲載 ココをクリック
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待望の新刊
検証•関西生コン事件❷
産業別労組の団体行動の正当性

A5判、 143ページ、 定価1000円+税、 旬報社刊
『検証•関西生コン事件』第2巻が発刊された。
巻頭には吉田美喜夫・立命館大学名誉教授の論稿「労使関係像と労働法理」。企業内労使関係に適合した従来の労働法理の限界を指摘しつつ、多様な働き方を基盤にした団結が求められていることをふまえた労使関係像と労働法理の必要性を検討する。
第1部には、大阪ストライキ事件の鑑定意見書と判例研究を収録。
第2部には、加茂生コン事件大阪高裁判決の判例研究を収録。
和歌山事件、大阪スト事件、加茂生コン事件。無罪と有罪の判断は、なぜ、どこで分かれたのか、この1冊で問題点がわかる。

[ 目次 ]
刊行にあたって—6年目の転機、 無罪判決2件 が確定 (小谷野毅)
序・労使関係像の転換と労働法理 (吉田美喜夫)
第1部 大阪ストライキ事件
・関西生コン大阪ストライキ2次事件・控訴審判決について (古川陽二)
・関西生コン大阪2次事件・鑑定意見書 (古川陽二)
・「直接労使関係に立つ者」論と団体行動の刑事免責 (榊原嘉明)
第2部加茂生コン事件
・労働法理を踏まえれば無罪 (吉田美喜夫)
・労働組合活動に対する強要末遂罪の適用の可否 (松宮孝明)

割引価格あり。

お問い合わせは sien.kansai@gmail.com