支援運動の成果が逆転無罪判決を勝ち取った
特別養護老人ホーム「あずみの里」裁判で東京高裁は7月28日、被告の准看護師を逆転無罪としました。
女性の遺族と施設の間で示談が成立していたにもかかわらず、長野県警が2014年1月に施設を捜査し、おやつの配膳を手伝い、女性の隣で別の入所者を介助していた准看護師が業務上過失致死罪で同年12月に起訴された事件。
「証拠を出そうとしない検察」
長野地裁松本支部で2015年に始まった一審では、検察側は当初、准看護師がドーナツを食べる女性を見ていなかったが「注意義務違反」だと主張していました。
ところが検察側は裁判が始まっても、女性の死因がドーナツを詰まらせた窒息死だと示す証拠を一向に出さず、1年以上経過してから、ようやく検察側の証人が、窒息だと述べただけでした。
「73万人にもおよぶ署名」
事故当時、おやつを食べていた入所者は17人で、介助に入った准看護師ら2人の職員は、自力で食べられない2人を介助してしていました。これは国の基準を満たすものです。
弁護団に追い込まれた検察は、それまでの主張を変える訴因変更(刑事裁判の継続中に、起訴状に記載された訴因または罰条を、追加・撤回・変更すること)を2度もおこない、「1週間前に女性のおやつをゼリー系へ変えたのに、ドーナツを女性に配ったことが准看護師の過失だ」と主張し始めたのです。一審判決は、訴因変更した検察の主張を認め、准看護師を罰金20万円の有罪としました。
この不当な有罪判決に対して介護・医療関係者を中心に、「介護の未来がかかった裁判」と位置づけ、准看護師を支援する運動が広がり、73万人にもおよぶ公正な裁判と無罪を求める署名が全国から集まりました。
「無罪判決を勝ち取った」
二審の東京高裁・大熊一之裁判長は、准看護師を無罪としました。亡くなった女性が事故の1週間前まで、おやきなどを食べており、ドーナツで窒息する危険性は低かったと指摘し、「ドーナツによる被害者の窒息等の事故を未然に防止する注意義務があったとはいえない」としました。判決は「食事は精神的な満足感や安らぎをえるために有用かつ重要。身体的リスクに応じてさまざまな食物を摂取することは有用かつ必要」と延べました。
「無罪判決は当然。人手不足の解消と待遇改善が急務」
介護中に急変が起きたことを「刑事責任」として、その場にいた准看護師が「罪」に問われた「あずみの里」裁判は、現場に萎縮が広がりました。
鹿児島大学法文学部教授・伊藤周平さんは、次のように延べています。
「無罪判決は当然です。刑事罰に問われるような過失は、看護職員にはありませんでした。検察の起訴は不当なものでした」。
「一審の有罪判決は、介護現場に大きなショックを与えました。現場が萎縮し、固形のおやつをゼリー状に変更する施設もありました」。
「特養は病院とは違い、生活の場です。おやつや食事を楽しむことは『生活の質』にかかわります。多くの介護施設では高齢者の不慮の事故などのリスクと向き合いながら、よりよい介護に努力しています」。
「介護施設で高齢者が安全で穏やかに生活するためには、人手不足や低賃金で疲弊する職員の待遇改善こそ急務です。政府は職員配置を増やし、そのための予算を確保することが必要です」。
「無罪判決の成果に学ぶ」
今回の無罪判決は、「何か急変があれば個人に責任が押しつけられる」と危機感を感じた多くの介護・医療関係者が自らのことと捉え、准看護師の無罪を勝ち取るために支援の輪を広げ、積極的な行動を展開したことによって得た大きな成果です。
私たち労働組合には、介護・医療関係者と連帯して、介護施設の人手不足解消、職員の待遇改善のための予算確保を政府に実行させる運動が求められています。
また、今回の無罪判決を勝ち取った運動に学び、それを実践することで、労働組合つぶしの権力弾圧を粉砕することが必要です。
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ
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連帯ユニオン、葛西 映子、北 建一、小谷野 毅、宮里 邦雄、熊沢 誠、海渡 雄一、鎌田 慧、竹信 三恵子(著)
内容紹介
戦後最大の「労組壊滅作戦」が進行。
警察・検察・裁判所による弾圧。
権力と一体となった業界あげての不当労働行為。
関西生コン事件の本質を明らかにする!
ストライキやコンプライアンス活動を「威力業務妨害」「恐喝未遂」として89人逮捕、71人を起訴。
委員長と副委員長の拘留期間は1年5か月超。
取り調べで「組合をやめろ」と迫る警察。
家族に「組合をやめるよう説得しろ」と電話をかける検察。
組合活動の禁止を「保釈許可条件」とする裁判所。
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