京都事件第4回公判、3月23日、京都地裁
連帯ユニオン関西地区生コン支部への権力弾圧をめぐる公判が3月23日、京都地裁で開かれました。第4回公判は、前回、時間切れとなった検察側証人K氏の弁護側による反対尋問と、新たな検察側証人I氏の証人尋問です。
「3つの事件を併合した審理」
京都事件は、恐喝・強要未遂などとされている「ベストライナー事件」「近畿生コン事件」「加茂生コン事件」の3つの事件を併合したものです。
「検察側証人K氏の弁護側反対尋問」
前回、時間切れとなった検察側証人K氏の弁護側反対尋問です。弁護人のK氏への尋問は、「ベストライナー社の労働争議と京都協組が介入して解決したこと、ベストライナー社の労使紛争解決と解決金に京都協組が介入していたこと、関生支部の支援と協力を得てアウト社(協組未加盟社)対策したこと、近畿生コン社の倒産はアウト社対策と関連していること、近畿生コン社倒産後の関生支部組合員の賃金・雇用保障の経緯、労使紛争解決に際しての解決金が合意したこと」などです。
「弁護人『検事の顔を確認するのやめて』」
弁護人の尋問に対してK氏は、淡々と答えていました。しかしKK氏はいくつかの証言に際して、検察官の方を向いて確認を求めるよう様子が見られたことから、弁護人から「検事の顔を確認するのはやめて」と指摘がありました。関生支部と協組のどちらに責任があるのかとの尋問に対してK氏が「双方に責任がある」と色をなして証言していたのが印象的でした。前回と同じく、検察官の異議を裁判官が却下するという場面が、いくつかありました。
「検察官の補充尋問と裁判官尋問」
検察官のK氏への最終尋問、補充尋問はけっこう長かったように感じました。前回のK氏の証言をしっかり分析して臨んだのでしょうか。この検察官の補充尋問でも弁護人からの異議に、裁判官はこれを認めました。
裁判官の「協組が関生支部との交渉相手なのか」との尋問に、K氏は具体的には証言せず「(協組を構成する7社)2社が協組の実権を持っていた」と証言していました。
最後に、弁護人から(協組)2社の名称確認と、金銭解決の方針で臨むことは当時の執行部(2社のうちの1社)からの指示か?の尋問にK氏は、名称を確認し、執行部の指示だということを証言しました。
「『ストライキされるから』と強調する証人」
午後からは、検察側証人、京都生コン協組理事長I氏の主尋問です。検察官の「ベストライナーや近畿生コンの争議」についての尋問にI氏は、検察官のストーリー通りに証言していました。検察官から「なぜ、協定書に合意したのか?なぜ、協定書に押印したのか?」の尋問にI氏は「ストライキされるから、ストライキされると会社の経営状態が悪化するから」などと、ことさら強調して証言していたのが印象的でした。憲法で保障されているストライキは労働組合の権利であり、要求実現の手段です。経営側にもロックアウトという手段があるのに・・・。
最後に、検察官が「処罰について」を尋ねるとI氏は「ドラマとか実際にある、ピストルを突きつけられて拒否すると死ぬ。ストで会社はつぶされるので、やむなく要求に従った。厳しい判決を願う」と述べて、検察側の主尋問を終えました。
「反対尋問『覚えていない。記憶にない』」
続いて、弁護側の反対尋問です。弁護人の尋問に対してI氏は「K氏から聞いた。覚えていない。記憶にない」などと、重要な点については明確な証言をしませんでした。また、弁護人が「警察・検察の供述調書」でI氏が供述している内容を尋ね、I氏が署名・押印している供述調書を示しても「覚えていない。記憶にない」と言うばかりでした。
「1987年の争議は裁判所で和解した」
弁護人が「1987年の争議解決の和解調書(裁判所)は読んだか」と尋ねるとI氏は「見ている」と証言。「輸送会社を設立して、その輸送会社に組合員が移籍する。解決金3億円で和解が成立したことが記載されているが」と弁護人が尋ねるとI氏は「すべて読んでいない。覚えていない」と証言。また「当時(87年)、恐喝、脅し取られたと聞いたか」との弁護人の尋問にI氏は「覚えていない」と証言していました。
「労組の公然化を認めると交渉しなければならない」
検察官の補充尋問後、3人の裁判官からの尋問。「労組(ベストライナー)の公然化を認めないとは?認めない基準は?」との裁判官の尋問にI氏は「(認めると)労働条件の交渉をしなければならず、ストライキで被害を受ける」と答え、裁判官が「認めないと団体交渉を受けることはないということか」と尋ねるとI氏は「はい」と答えていました。
別の裁判官が「(ベストライナー争議解決の)協定書の内容は押印している4社が履行し、協組が主人公となって責任を負うということか」との尋問にI氏は「協組は協定書の当事者ではないが、履行責任がある。責任を持てというものだと思う。違反した場合、4社が呼びかけて協組の責任においてというもの」などと証言していました。
裁判官の尋問が終わったあと、このI氏の証言に対して、検察官が補充尋問で修正しているところが印象的でした。
「開廷中に、携帯電話の着信音が鳴り響き、大きなイビキが」
法廷では、関西の生コン業界のトップらが傍聴席に座っていました。大阪広域生コン協組の理事長と副理事長が最前列に座っていました。そのすぐ後ろの席に座っていた京都広域生コン協組の理事長の携帯電話から着信音が鳴り響いていました。開廷中にもかかわらず。しかも、すぐに音が消えませんでした。
また、後部座席に座っていた大阪広域生コン協組の役員は、大きなイビキをかいていました。そのイビキの大きさに裁判官や検察官らも傍聴席を向いていました。
裁判所の法廷内の傍聴に際して、非常識で節操のない生コン業界の経営者にはあきれるばかりです。
「弁護団から本日の公判のポイントが話された」
公判終了後、総括集会を開催しました。永嶋弁護士は「午前中のK氏の反対尋問終了後、検察官が補充尋問で立て直ししていた。1987年争議の裁判所での和解解決金は恐喝となっていない。公然化を認めないというところでは、不当労働行為企業を擁護する検察の立ち位置がわかった」。
小田弁護士は「I氏は、『覚えていない』(警察・検察の供述調書も)と言う検察側のストーリーは反対尋問でくずれた。裁判官は、協定書の当事者が誰か気にしているようだ」とコメントし、次回の検察側の証人も反対尋問に全力をつくす方針を示しました。
「湯川委員長、支援の感謝と決意表明」
当事者の関生支部・湯川委員長は「仲間のみなさんの早朝からの支援行動と傍聴支援に感謝する。検察側の証人には反対尋問で無罪を立証していく。大阪広域生コン協組の動員に、しっかり闘うためには、仲間のみなさんの結集と支援行動が欠かせない。関生支部は、裁判闘争勝利と労働運動に全力で挑む。引き続きの支援をお願いする」と支援共闘の仲間への感謝と勝利するまで闘う決意を表明しました。
「支援行動と傍聴支援に駆けつけてくれた多くの仲間に感謝します」
午前10時から午後4時過ぎまでという長時間にわたる公判に、傍聴支援に来てくださった仲間のみなさん、本当にありがとうございました。早朝、遠方から駆けつけてくれた仲間のみなさんの支援行動に感謝します。
次回の第5回公判は、4月28日(木)、10:00~終了未定です。検察側証人の近畿生コン元社長のT氏の証人尋問(主尋問と反対尋問)です。
大阪広域生コン協組ら生コン関連業者の動員が増員されています。多くの仲間・支援者の結集を呼びかけます。
「労働組合つぶしの大弾圧を許さない実行委員会」への賛同の呼びかけ PDF
池田香代子の世界を変える100人の働き人60人目
労働運動を〈犯罪〉にする国「連帯ユニオン関西地区生コン支部」事件
ゲスト:竹信三恵子さん(ジャーナリスト・和光大学名誉教授)
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賃金破壊――労働運動を「犯罪」にする国 竹信三恵子(著)– 2021/11/1 旬報社 1,650円(税込み)
1997年以降、賃金が下がり続けている先進国は日本だけ。
そんななか、連帯ユニオン関西地区生コン支部は、賃上げも、残業規制も、シングルマザーの経済的自立という「女性活躍」も実現した。
業界の組合つぶし、そこへヘイト集団も加わり、そして警察が弾圧に乗り出した。
なぜいま、憲法や労働組合法を無視した組合つぶしが行なわれているのか。
迫真のルポでその真実を明らかにする。
目次 : プロローグ
第1章 「賃金が上がらない国」の底で
第2章 労働運動が「犯罪」になった日
第3章 ヘイトの次に警察が来た
第4章 労働分野の解釈改憲
第5章 経営側は何を恐れたのか
第6章 影の主役としてのメディア
第7章 労働者が国を訴えた日
エピローグ
【著者紹介】
竹信三恵子 : ジャーナリスト・和光大学名誉教授。東京生まれ。1976年東京大学文学部社会学科卒、朝日新聞社入社、経済部、シンガポール特派員、学芸部次長、編集委員兼論説委員(労働担当)、2011-2019年和光大学現代人間学部教授。著書に『ルポ雇用劣化不況』(岩波新書、日本労働ペンクラブ賞)など。貧困や雇用劣化、非正規労働者問題についての先駆的な報道活動に対し、2009年貧困ジャーナリズム大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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